2013年6月14日金曜日

盲目の按摩師




「マッサージ一時間お願いします」
英語で伝えると、男は見慣れない道具を使って器用に点字を打ち、それをマッサージ師に渡した。
アナに紹介してもらったこの店は、マッサージ師から受付スタッフまで皆、盲人だった。

僕を担当した女性は英語が話せないようで、サワディカ〜(こんにちは)という言葉以外、ほとんど会話をすることなく淡々と一時間が過ぎた。
マッサージの腕は可もなく不可もなく。そもそも僕は先生以外のプロにマッサージをしてもらった経験が無いので、良し悪しもよくわからないのだが。。

その後、店から数十メートルのところにある食堂で昼食をとっていると、先ほどのマッサージ師とその旦那さん(彼も盲人)がやってきた。
彼らの姿を確認した食堂のおばちゃんは、手をとって席に座らせた。用意した食事をテーブルに置き、箸をもたせ、器の位置を教えていた。

ふと、東京での出来事を思い出した。
電車を降りると、駅で一人の盲人を見かけた。彼は杖を使って点字タイルをなぞり、見事に電車を乗り換えていた。
それまで意識したことはなかったけど、東京では駅以外でも、いたるところに点字タイルが敷かれていた。

素晴らしい。
東京もチェンマイも、よく出来た社会システムを持っている。

帰り際、コップンカ〜(ありがとう)と彼らに話しかけると、声を覚えていてくれたようで、「オー、ジャパニーズ!」と笑顔を返してくれた。


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